ガリレオおじさんの愉快な日記

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書評 著:梅原大吾「勝ち続ける意志力」

やっぱ、ウメハラでしょ。

今日は真面目な書評を書きたいと思います。

目次

プロゲーマー、ウメハラ

僕が学生だった時のことです。当時ニコニコ動画という動画サイトにハマっていて、暇があればニコニコ動画を観る、所謂"ニコ厨"だった時期がありました。今でこそオワコンオワコンと叫ばれていますが、かつてのニコニコ動画は色々な人が好き勝手に面白い動画を上げて、それを皆でワイワイ騒ぐ一種のお祭り騒ぎのような状態でした。それはもう魑魅魍魎が跋扈し、ありとあらゆるク◯動画(いい意味で)で溢れ返る状態でした。

話が逸れました。
そんな中、とある動画を見つけます。

これはストリートファイターⅢの日米大会準決勝の動画なのですが、この日本代表選手が、僕が今回紹介する梅原大吾ことウメハラさんなのです。

梅原 大吾(うめはら だいご、1981年5月19日 - )は、日本のプロゲーマー。

中略

日本での愛称はウメハラ、ウメ、ウメさん。アメリカでは本名のDaigoのほか、The Beastというニックネームでも知られる[5]。

2D対戦型格闘ゲームにおいて数々の大会を制している、国際的に著名な格闘ゲームプレイヤー。とりわけカプコン社製の対戦型格闘ゲームで実績を多く残し、同社開発本部長(当時)の岡本吉起から「10年に一人の天才」と呼ばれた。

Wikipediaより引用
梅原大吾 - Wikipedia

ここまで言っておきながら僕自身はあまり格ゲーに詳しくないニワカなのですが、「レッツゴージャスティーン!」、「小足見てから昇龍余裕でした(実際は言ってない)」、「ウメハラがぁ!」など数々のネットスラング?を生み出した人物として有名で、当時としては珍しいプロゲーマーとして注目されていました。

今でこそ、e-sportsやYoutuberなど遊びが立派なビジネスとなる世の中となりましたが、その当時の世の中の意見しては「遊んでばかりでけしからん!ちゃんと働け!」というものが多かったように思います。
(そういえば、とあるゲーム実況者がコミケでグッズを販売しただけで、炎上していたことがありました。当時はゲームとはただの趣味で、それでお金儲けするのは悪だという風潮が強かったのですね。)

そんな世の中でしたから、本気でゲームに向き合い世界中のプロゲーマーと戦い続けるウメハラさんを見て、僕は素直に"凄い人だ"という感想しか出てこなかったのです。先ほど申し上げたように、僕自身は格ゲーはあまり詳しくないのですが、やっぱり当時の日本を知る身としては、"ゲームを本気でやる大人"というのはそれだけで、インパクトがあったのです。

そんなこんなで月日が過ぎ、ある時この本を見つけました。

この本を手に取ったきっかけは本当になんとなくで、天才プロゲーマーがどんなことを考えているのかを知りたかったからという理由でした。どこか飄々とした雰囲気を持つウメハラさんのことですから、一体何故プロゲーマーを志したのか?その理由が気になったのです。

オンリーワンのセンスを見つけるだけではダメ

ウメハラさんの凄い所はその「自分だけのセンス」というものに囚われない点だと思います。勝ち続けるためにはどうすればいいのかを常に念頭に起き、常に嗅ぎ分ける嗅覚にあると思います。

さらに危険なのが、自己分析して自分のスタイルを決めるのではなく、他人の評価を鵜呑みにしてしまうことだ。自分の持ち味はこれなのだと勘違いして、それを生かして勝とうとする。当然、結果は出ないし長続きもしない。

そのゲームが本当に好きなわけではなくて、ただ大会で勝ちたいから練習したような場合、そのゲームを心から愛している人間、そのゲームに懸けている人間には到底勝つことはできない。


※本書第二章より引用

他己評価ではなく自己評価。
そしめ小手先のテクニックでは無く、本気でそのゲームを好きにならないと本気の相手には勝てない。ウメハラさんはそう断言しています。

これはビジネスの世界でもそうで、会社で通用していたやり方がいざ転職したり独立すると全く歯が立たなくなりがちです。これはその会社の看板であったり、自分以外の人の力添えがあったからこそ自分が立ち回れていたという事実があるからなのですね。

だからこそ、他人の評価ではなく自分を客観的に見つめて評価する。人から称賛されると得てして自分の実力以上の評価を下しがちですが、だからこそ他人の評価に振り回されすぎてはいけないということですね。

そして、自分がやっていることが好きかどうかも重要。これは僕もものすごく感じていて、"勝ち"にこだわると"勝つ"ことにしか意識が向かなくなって、遊び心というか試行錯誤をしなくなるのですよね。焦って同じパターンを繰り返してドツボにハマるというか。勝ちから一旦離れてみると"こういうやり方だと負ける傾向にある"といった負けパターンを見つけられるようになるのですよね。好きになるというのはこういう冷静さを身につけるためにも重要だと思います。

別に働きながらでもいいというスタンス

この本を読んでいて驚いたのが、ウメハラさんも、一度プロゲーマーの道を挫折していたことです。本書では「このままプロゲーマーを続けても何も残らない」と語られており、ウメハラさんの当時の葛藤が伺えます。
 
プロゲーマーの道を辞めたウメハラさんは、父親の勧めもあり介護職の道へと進みます。始めは勝負師が介護なんて出来るのか?という不安もあったようです。しかし、人々から感謝されたり働くことによる充実感によって「勝負事じゃなくても出来るじゃないか」という自信を得ることが出来たようです。

そうした紆余曲折を経ながら自分の生き方を冷静に見つめ直すし、ウメハラさんは再びプロゲーマーへの道を志し始めます。スランプ期の脱出。プロゲーマー、ウメハラが再始動する瞬間でした。

好きなことをひたすら続け、常にトップを走り続けてきたウメハラさん。彼も人生に悩む瞬間があったという事実は僕にとってもの凄く衝撃的でした。「プロゲーマー、ウメハラ」ではなく、「梅原大吾」としてどうあるべきか。そんな1人の人間の葛藤が垣間見える章でした。

人生色んな選択肢があってもいい

「好きなことで、いきていく」

今をときめくYoutuber達のキャッチフレーズです。

僕自身はこの言葉はとてもロマンがあると感じています。誰だって皆が憧れる存在になれる。だからこそこの言葉に人々は魅了されるのでしょう。

一方で、最近こんな言葉を目にすることがあります。
「会社勤めはもうオワコン!これからは個の時代だ!」

そうですね。このような言葉が出てくるということは、それだけ生き方の選択肢が広がった証拠なのでしょう。そういう生き方を志すのは別に構いませんがその一方で、全ての人がその選択肢を選ぶことが出来るのかというと、やはり疑問しか出てきません。

そもそも始めから「好きなことを職業に!」と簡単に謳う人は、本当に楽しいことをしようとしているのだろうか?と思ってしまいます。ウメハラさんだって始めはただのゲーム好きだったのが、それがどんどん自分だけのスキルのなり、いつの間にかプロゲーマーになっていたのですから。始めからビジネスでやるつもりなんか無かったのですよね。好きなことを見つけてビジネスにするのではなく、好きなことがいつの間にかビジネスになっていた。これが真実なのだと思います。

確かに好きなことだからこそ、責任を持ってビジネスにすべきという意見もあります。
某ラーメンハゲ※も「お金が発生しないものは無責任なものになる」と言っていますが、それはラーメンハゲが"本当のプロ意識を持って"客と向き合っているからです。でも、そもそもプロって名乗れるレベルまで辿り着くのに、どれだけの人が耐えられるのでしょうか?

※某ラーメンハゲが分からない方は、「芹沢達也」でググって下さい

当たり前の話ですが、プロの世界って結果を求められるんですよ。特に、アートとかの芸事をビジネスにするって難しいんですよ。お金になるまでに時間がかかるし、ライバルも多い。だからみんな途中で挫折するんです。だからこそ楽しいことじゃないと続かない。

僕もアマチュアでサックスを13年ほど続けていますが、やっぱりずっと続けているものって楽しいんですよ。出来なかったことが出来るようになるって、本当に楽しいんです。だから、その域に到達するまで続けられるか?耐えられるか?ここが好きなことを続けるために重要ポイントなのだと思います。

ウメハラだって、人生に悩む」

これから自分の好きなことをビジネスにしようと考えている方は、ウメハラさんの生き方を参考にしてみるといいのかもしれません。